第14話

「つーか、電車乗ったの久しぶりだわ。なんかいいな、昔から散々見てきたこの田んぼ風景も」


「……あの、質問に答えてもらえますか?」


「だから、ハルナだって」


「名前を聞いてるんじゃなくて! なんだか怖いんですが……」


「まあまあ、細かいことはどうでもいいでしょ」


「よくありません!」


「うん、よくない」


「ねえ、どっちなんですか!」





不審者こと自称ハルナさんはヘラヘラと笑うと、丸眼鏡をクイ、と正す。




「じゃあとりあえず、いろはの隠れファンってことにしといて」


「いやいや、だとしたらそれはストーカーっていうやつじゃ……」





そもそも何で私の名前を知っているのかも言ってくれない。


ハハハ、と笑っているハルナさんは本当のことを言っているのかも定かではないし、一体全体どうなっているんだ。







「ねえ、日光に行くの?」




すると、唐突に私の目的地を言い当ててくる。


ギョッとするとハルナさんは満更でもなさそうに口角を上げていた。




「え、こわ、やっぱりストーカー?」


「さあ、どうでしょう」




一人でのんびり電車旅をするはずが、どうしてこうなった。


変な人に絡まれてしまった。





「何で分かったんですか…」


「それ、さっきから観光マップ持ってるだろ?」


「えっ……あ、なんだ、そうか」


「うむ、初歩的な推理」




ハルナさんは今度はお腹を抱えてコロコロと笑う。


身体を傾かせた拍子に華奢な首元がチラリと見えた。

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