第13話

あからさまに怪訝な顔をする私に、不審な男の人は満更でもなく口角を上げる。




「知り合い?」


「はい……」


「まあまあ、なんだっていいでしょ。そんなにビクビクするなって」


「しますよ! って、あっ! 何勝手に私のイチゴオレ飲んで……」


「あぁー潤った。ちょうど喉渇いてたんだ」


「本当に信じられない! 馴れ馴れしいにもほどがあります!」




そしてあろうことかヒョイッと紙パックを取り上げられた。


何の躊躇もなくストローを咥えるその人にビックリ仰天するのは言うまでもなく。



普通あり得る?


ただ同じ電車に乗り合わせただけの男の人にここまでされるとは、通報ものだ。



それなのに、何故この人はのんびりしているんだろう。




「ごちそーさん」


「ごちそーさん、じゃなくて! 何なんですかあなた!」


「ハルナです」


「はあ?」


「俺、ハルナ」


「ハルナ…? 名前なんて聞いてません!」





ガタンゴトン…。


不審者は窓枠にあるテーブルの上に紙パックを置くと、誰も聞いてもない名前を勝手に名乗ってくる。

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