第11話

え? なに。



ビックリして顔を上げても、周囲には私の知り合いらしき人はいなかった。


なんだ、空耳か…と思ってまた観光マップを探し出そうとするけれど、






「おーい。いろは」




また不審な呼びかけがある。


分かりやすく肩を震わせ、通路を挟んだ向こう側のボックス、後方、さまざまな箇所に首を回してから、最後に真正面へと視線を持っていく。


すると一人だけ視線があった人がいた。








「無視するなよな」





私が腰を下ろしているボックス席──の向かいに座っている男の人。


何歳か年上だろうまったく面識のない人からの視線だった。

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