第9話

ガタンゴトン。電車が揺れる。






高校3年生というのは、私の名前の横に並ぶ肩書きだ。



のんべんくらりと腰を下ろしているけれど、見ての通り、制服は着てこなかった。


もちろんリュックの中には教科書も入っていない。持ってくる気もなかった。今回は学校に行くために乗っているわけではないからだ。





これは、私のちょっとした非日常。


いつもの時間に通学電車に乗り、学校をサボって終点まで揺られてみたいと前々から思っていたから。




なんのためにしているのかも分からない勉強、学校に行って帰ってくる日々、劇的な変化なんてない毎日のルーティンに、心のどっかで飽き飽きしていた。


私はなんのために生きているんだろう。


心の中にぽっかり空いた穴を埋めるみたいに、青空の中の真っ白な積乱雲を車窓から眺める。




のんびり気ままに終点まで乗り、日光で観光をして帰ったら楽しいかもしれないって。


気がついたら、まるで導かれるようにして新大平下駅の改札の前に立っていたのだ。

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