第8話
周囲には観光マップを眺めて、修学旅行みたいにお菓子も広げている乗客がいる。
私にとってこの光景は当たり前。
だけど、この時間帯の東京の地下鉄であればこういうことはきっとない。この"東武日光行き"の下り電車は、どことなく"旅"の色が強いと思う。
"日光"。
この電車に乗っているほとんどの人は、この地に向かうつもりなのだろう。
まだ見ぬ目的地に思いを馳せ、癒し、刺激、日々の中のちょっとした非日常を味わいにやってくる。
このローカル電車は、さまざまな人を乗せて南から北を繋いでいる。
そんな中で私は、リュックに詰められているジュースとお菓子を膝の上に取り出した。
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