第5話

栃木県栃木市は県南にある人口15万人ほどの街だ。



新大平下駅から三駅上ると隣の群馬県に入り、すぐに埼玉県へ接続する。


片田舎ではありながら、主要都市への行き来がしやすいという点で近年移住者が増加している。



そんなに住みやすいのかな。


夏は毎日夕立があるし、冬は底冷えするほどの寒さがあるというのに。









──……カンカンカンカン。


コンクリートに囲まれた年季を感じる小さな駅構内で、私はこれからやってくる電車を待っていた。




これは2014年6月7日のこと。


近くで踏切の警報音が鳴り始めたのを耳にした私──早乙女そうとめいろはは、その時、下り線のホームに立っていたのだ。




胸元まで伸びた黒い髪がゆらりゆらりと風に乗る。


開いていた手帳から視線を上げ、今から乗る予定の電車が近づいてくるのを目視した。

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