第12話 彼女の家で勉強会①
◇20:00~ 鳳凰院はかせの配信◇
【コメント欄】
はかせジミカノ最新刊買った?
「うん! 買ったよ! 先月友達とアニメショップ行ってきてさ! 面白かったよー! 佐藤は相変わらず可愛いし、智樹と佐藤の絶妙な距離感もさ、なんか良いよねー」
【コメント欄】
分かる
え、友達って男?
彼氏?
「…………………………………………違います」
【コメント欄】
なんか反応怪しくない?
え、マジで彼氏なの? ショックというか羨ましい
大事件だ
「ち、た、え、ち、違います! 違いますー! お、女友達だから! 百合だから!」
【コメント欄】
百合ってなんだよ
まあ待てお前ら。はかせだぞ? そもそも友達なんている訳がない
「そ、それはそれでムカつくんですけど! 友達くらい沢山いますから! 言っておくけどその日の私陽キャだったから! ウェーイって感じでさ! もう私がリードしてたっていうか」
【コメント欄】
また変な事やって相手困らせたりしてない?
「困らせました」
【コメント欄】
相手に負担ばっか与えてたら見限られちゃうよ?
急なマジレス草
「……あ、ああ、あ」
■■■
呱々原さんと休日に遊んでから半月が経過して六月に入った。
色々アクシデントはあったけど、相変わらず俺達の関係は良好で、呱々原さんの配信後にLINEのやり取りをしたり、二人でオンラインゲームをしたり。
俺はとても充実した日々を送っている。
強いて悩みをあげるとするなら、執筆がちょっとだけ遅れてる事くらいである。
いや全然書けてはいるんだけどさ。
ただ新人賞の締め切り日が七月十五日で、本来この時期には二万五千文字書けてないといけないんだけど、実際今俺が書けてるのが、
三百文字。
残り二万四千七百文字分のちょっとした遅れが出てる状況なんだよね。
……。
俺はベッドにダイブして枕に顔をうずめて咆哮した。
「むーりーだって!!!!」
誰だよ一日千六百文字ペースで書けば良いとか言ったアホ野郎は。
出来る訳ねえだろぶっ飛ばすぞまじで。
ちなみに日程を遅らせて別の新人賞に送る選択肢はない。
呱々原さんに見栄を張って七月にラブコメで一冊書き上げて出すって言っちゃった。
あと、見たいって言ってくれたから、全然良いよって頷いちゃった。
「車に轢かれて退学しようかな」
そんな事を考えていると、
「アンタ! うるさいわよ!」
母が勢い良く部屋に入ってきた。
「え、ちょっ、なんでノックしないの!?」
声が漏れてた事が恥ずかしくて赤面している俺を無視して、母がため息を漏らした。
「最近夜奈ちゃんとか連れてきて浮かれてるかも知れないけど、アンタテストとか大丈夫なの?」
「……」
このおばさんは、一体何を、言っているんだ。
テスト? 聞いたことない単語だ。
「そんなんじゃ、夜奈ちゃんと怜ちゃんに愛想つかされちゃうわよ」
「……あ、ああ、あ」
ということでテスト期間に入った。
■■■
どうしよう、俺全く勉強してないから、授業中の日本語とかもう何言ってるか分からないんだよね。
毎回テストの時って一夜漬けで丸暗記して乗り切ってきたんだけど、数学や物理の公式使った問題はそういうわけにもいかず。
中学の時は怜に泣きついて教えて貰ってたっけ。
でも最近まで距離おいてた俺が頼るのは流石に気が引けるし。
危機感を抱きながら昼休みの図書委員の業務をこなしていると、
「ま、槙島くん。……さ、最近困った事とか、ない、ですか?」
呱々原さんから上目遣いでそんなことを尋ねられた。
心做しか彼女の様子がオドオドしている。
「ど、どうしたの急に?」
「!!!??? ……ひ、人の悩みを聞くのが、し、趣味で」
「そうなの!?」
初めて知ったよ。
なんて献身的な趣味だろう。
正直打ち明けるのは恥ずかしいけど、他の言葉が思いつかなくて、何となくそれを口にしてみた。
「うーんそうだねー。まあもうすぐ中間テストだから憂鬱だなー、みたいな? はは」
本当は今すぐ学校の窓ガラス割って逃げ出したいくらいだけど。
「呱々原さんはどう?」
余裕な態度を取り繕いつつ、これ以上俺の成績事情を知られたくなくて、話題を呱々原さんの方へ移した。
「……わ、私も、全然駄目で」
「そ、そうなんだ」
そういえば呱々原さんも以前勉強の要領が良くないとか言ってたっけ?
すげえ失礼だけど、仲間がいて安心した。
呱々原さんが勉強まで出来たら、劣等感で息が出来なくなる。
見栄を張る必要がなくなって、俺も正直に話すことに。
「勉強難しいよねー!? 俺も何言ってるのかもう分からなくてさー! 一緒に勉強する? 何てね。呱々原さん配信で忙しいもんね。それに今日は学校行事で早帰りの日だし」
「っ!!!??」
俺がそう言うと前のめりになって反応する呱々原さん。
なんだ?
「あ…の…か?」
「ん?」
モゴモゴと何かを言っている呱々原さん。
俺が首をひねると彼女は意を決して俺に近づいて来て、甘いほのかな匂いを出しつつ耳元で囁いてきた。
「……き、今日の放課後。私の家で、べ、勉強しませんか?」
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