特別な人

第89話

妹や、優馬さんが出て行って1時間ほど経った。





みんな帰ってくる様子はない。





窓際を見ると綺麗な花が咲いている。





手を伸ばし、花に触れようとしたら花瓶を落としてしまった。





プラスチック製の花瓶だったのか割れることはなかったが、綺麗な花は散らばってしまった。





落ちた花を拾おうとベッドから降りようとするがうまく足を動かすことができない。





そのままベッドから落ちる様に下に降り、花に触れた。







黄色のバラは棘が残っていた。「痛っ…」流れる血を見て何かが蘇った気がした。






何故か、本の題名がいくつか浮かんだ。





四つん這いになりながら足を引き摺るように動きペンと紙を出した。殴り書くように思い出した本の題名を書き、見つめた。






何か分からないまま、近くにあったカバンを取り、紙を入れ病室から出た。手すりに捕まりどうにか前に出る。





廊下には人は居なく、不自然な行動を止める人は居ない。





私はよく分からないまま、進み続ける。





ある部屋から人が出てきて「大丈夫ですか?」と聞かれた。




顔を上げてその人の目を見る。




若い女の人はタバコを持っている。喫煙室のようだ。




「大丈夫です。」といい、また進もうとした。もう一度本の題名を思い出そうと、カバンから紙を出そうと手を入れた。






手にはタバコが当たった。





そのタバコをカバンから出し、見つめる。





「タバコ吸いたいんですか?中の椅子まで手伝いますよ。」そんなつもりはなかったが、そのタバコが何故か気になり、喫煙室に入った。





女の人は私を椅子に座らせると喫煙室から出て行った。





中には私1人だ。






タバコなんて、吸った記憶なんてないのに口に咥えて気がついたら慣れたように火をつけていた。




それは最後の一個のタバコだった。






タバコを吸い、吐いた瞬間煙が出て、その香りを思い出した。






「……りゅう?」いつの間にかその名前に呟いていた。




頭が痛くなり、椅子から落ちる。





頭を押さえて喫煙所から出た。






「藤岡さん、まだ目が覚めないって。てゆうか、あの人外国の血が入ってたなんてな…瞳が青くてびっくりしたよ。」




「え?有名な話だぞ。学生の時は金髪で青い瞳だったんだよ。」

白衣を着た2人は話しながら、歩いて行ってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る