第85話

顔合わせの日、兄が来るものだと思っていた相手の親や、彼女は驚いた顔をしたが、すぐに受け入れたようだった。





結婚式も滞りなく終えたが、彼女の顔はいつだって暗かった。





家からほとんど出ることもなく、部屋にずっといた。





ある日、彼女宛の手紙が来た為彼女に渡そうと彼女の自室をノックした。珍しく外出しているようで、仕方がないから机にでも手紙を置こうと考え部屋に入った。




中は整頓されており、余分なものは一つもなかった。






しかし、机の上にdiaryと書いた太めのノートが一つ置いてあった。





だめだとは思ったが、開けてみると丁寧な字で日記が書いてあった。




随分古いノートで昔から書いているようなものだ。日によって長さは違い、長文を書いている日もあれば、何も書いていない日もあった。





そんな中で、あるページが目に入った。






〝天使かと思った。〟その一言から始まった文章は〝りゅう〟という男と出会った日の出来事が書いてあった。





〝彼は特別に見えた。何故か分からないけど、余りにも美しい瞳は私を離さなくて、気がついたら、死のうとしている彼に話しかけていた。自分にも、人にも興味なんてなくて、死にたいなんて思ったことなんてなかった。でも、いつのまにか「殺してほしい」なんて言っていた。〟





死のうとしていた〝天使〟を彼女は助けてしまった。





彼女は彼を特別に感じた。好きとかそう言う感情ではなく、ただ、他の人とは違うように感じた。




そんな彼に殺されるならそれでもいいと思っていた。





でも、彼は殺すことなく、彼女を元を去った。

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