第75話

「2人ともきてたの?」私が病室に入ると「ああ。はなはいつも来てるのよね?」母にそう言われ、「来れる時は…」と小さく答えた。





「なぁ、はな…藤岡隆さんって本当に知らないのか?」父にそう聞かれても、知らないものは知らない。私は首を振った。





「ねえ、みなみと相手の方が再婚すればいいと思わない?こんな不貞行為、優馬さんだって許してくれるわけないし…相手の方…お金持ちなら尚更…ねぇ…」母がそう言うと父は大きく頷いた。




「優馬さんを裏切った2人が一緒になるなんて、ダメに決まっているでしょ!申し訳なさすぎるよ。」少し強くそう言うと、2人は驚いた顔をした。




滅多に怒らない娘が声を荒げる姿に驚いたのだろう。




「生憎ですが、お相手の方婚約者がいるらしいですよ。」ドアから入ってきたのは優馬さんだった。




両親はバツの悪そうな顔をした。




「いらっしゃったの?」母が聞くと「夫なので」と、優しく微笑んだ。





両親はしばらくすると用事があるからと帰ってしまった。




「……うちの親がすみません、優馬さん」私がそう言うと彼は微笑んだ。

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