第76話

姉が入院してからもう2週間経った。




姉の目はまだ覚めない。





午後から強い雨が降り始めたせいで、私は帰らずにいる。





本を読みながら姉のそばに座っていると、カサッと物音がした。




私は音のした姉の方を見る。彼女の手が小さく動いた。





「お姉ちゃん?」声をかけるとさっきよりしっかりと手が動いた気がした。






「…っ…ナースコール」私は近くにあったナースコールを押して看護師さんを呼んだ。




姉に声をかけつつ看護師さんを待つ。





少しして看護師さんやお医者さんがきた。





「………ここ……は…」姉が掠れた声で呟いた。





「お姉ちゃん!病院だよ。ずっと眠ってたんだよ。」そう声をかけると私を見上げた。






「あなた……だれ…」



姉は記憶を失っていた。

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