第64話
「あー、すみません。」私はそう言ってタバコをカバンにしまった。
「こっちで一服しませんか?」彼はそう言うと微笑んだ。
怪しげなその男性に面識はない。
でも、タバコを吸いたい気分だった私は岩場から男性のいる場所へ戻った。
彼がくれた火をタバコにつけると吸った。
チラッと隣を見ると彼もタバコを吸っていて、私と同じ銘柄だった。
彼は不思議そうに「どうかしました?」と聞いてきた。「…いや、その銘柄吸ってる人あんまり見たことないから。」私がそう言うと彼は笑った。「これ、今度廃盤になるらしいですよ。」
彼はそう言うとまたタバコを吸った。
「そうなんですか…」私はタバコの火を見つめる。
この銘柄が廃盤になろうと、私には関係ない。
どうせもう死ぬのだから。
でも、丁度よかったのかもしれない。りゅうはもうこの銘柄を吸えない。
なくなるのだから。
きっと、タバコを見て私を思い出すこともなくなる。
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