第11話

「五条さん、何で貴方に変わったんですか?」私は庭園で彼に尋ねた。





「あぁ……特に意味はないよ。君は兄の好みっぽかったから。僕は兄が嫌いなんだよ。だから奪おうと思って。」彼は不気味に笑った。





「それだけの理由で…結婚を?」私は驚いた。この人にとって結婚は嫌がらせの為の道具ということになる。






「君に性的関係は望まない。会社に金銭的援助も行う。君の生活も不自由ないようにするし、好きに生活するといいよ。」彼はそう言った。





結婚して一緒に住み始めたが、本当にその通りで、何をしても彼は何も言わなかった。





仕事だって勝手に始めたが文句すら言わない。恐ろしいくらい私の好みの食事を出し、クレジットカードの中には使いきれないくらいのお金が常に入っていた。





私はそんなことをする男が気持ち悪くて堪らないのだ。





メリットなんて何もないのに。兄に対する嫌がらせ。そのためだけにそんなことをする五条優馬という男が。





「正直、生活には困っていない。でも……これから先もこんな生活続けるなんて…耐えられない。」そういうと「じゃあ、殺してあげる。」りゅうは笑った。





悪魔のように。





私の首元にあった手に力が入り、酸素が薄くなる。





私は一瞬強く目を瞑り、開けた。





「りゅ…う……まっ……て……」そう訴えると彼は直ぐに手を離した。





「ごめん…やっぱり嫌だった?」彼はそう言うと私を抱きしめた。





悪魔のように感じた彼の体温は暖かかった。




「違う……りゅう…目は何でそんなに黒いの?」私はあの瞳が好きだった。





「……カラーコンタクトだよ…この方が日本では生きやすいからね。」そう言って洗面台に向かい、少しして戻ってくると青い瞳に戻っていた。






「私…りゅうの瞳がすき。貴方の瞳を見て死ぬことを決心したの。」




彼は少し驚いたような顔をして悲しそうに笑った。

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