第10話

私は笑って承諾した。





それでも本当は逃げ出したかった。





そんな中出会ったのがりゅうだった。





いっそ殺してほしい。彼はそんな私の願いを唯一叶えてくれる人。そう思った。




あの吸い込まれるような瞳が『死んだら楽になれる。』そう言っている気がした。綺麗な瞳の悪魔の囁きだった。





結局私たちはいつも〝自殺ごっこ〟をしているに過ぎなかかった。彼は私を本気で殺さないし、私も彼を死なせない。






最後の日、卒業式の日あの屋上で落ち合うはずだった。彼は私を殺し、その後に死ぬ。






そう決めていた。





でも、彼は来なかった。






「何で、あの日来なかったの?」私は彼にそう尋ねた。




「卒業式の日、朝起きたら飛行機の中にいたんだ。どうせ死ぬつもりだったから抵抗せずに海外の大学を受けていたんだけど、留学先に早めに飛ばされたんだよ。俺が逃げること何となく予想していたらしい。」彼は自嘲気味に笑った。




「俺が来なかったあの日、どうやって過ごしたの?」りゅうは私を見つめた。





「卒業式の後、屋上には誰もいなくて、悟った。りゅうは来ないって。」





希望も何もかもあの屋上に置いて、私は家に帰った。





綺麗な振袖に着替えて料亭に連れて行かれた。





目の前に現れたのは聞いていた汚くて臭い歳の離れた男ではなく、少し年上に見えるが好青年風の男性だった。





「こちらの事情で相手が変わることになって申し訳ありません。」彼にそう言われ、親はにこやかに笑っていた。私は何も知らされてなくて驚いたが、知らない人と結婚する事実は変わらない。





お決まりの「後は若い2人で」なんてことを言われ庭園を歩いた。

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