第8話
「お待たせいたしました。」そう言われてコーヒーが届いた。
私はコーヒーを飲みながらまたぼーっと外を眺めていた。
コーヒーを飲み終わると伝票を持ち会計に向かった。りゅうのことを思い出したらタバコを吸いたくなってきたから、お店を出て喫煙室に向かおうと考えた。
「有難うございました。」店員に見送られながらホテルの廊下を歩く。
目の前から誰かが歩いてきたため私は少し避けるために壁際にずれた。
相手とすれ違い喫煙室に向かおうとした時、すれ違った人から同じ銘柄のタバコの匂いがした。
若い人は電子タバコを吸っていることが多い今の時代、私が昔から吸っているものを若い人が吸っていることに少しだけ驚いた。
私は彼のことが気になり、少しだけ振り返ろうとした。
「みなみ?」振り返った瞬間、すれ違った男にそう呼ばれた。
「…え?」私は声のする方を見た。やっぱりさっきすれ違った人だ。
でも、こんな知り合いはいないはずだ。こんな人見たことがなかった。
「あの…どちら様?」私がそう聞くと「忘れちゃった?」と彼は少し悲しそうな顔をした。
「りゅうだよ。」彼はそういって少し微笑んだ。
「……え?」あの時の彼とは全然違った。色素の薄く長い髪は今っぽく切り揃えられていて真っ黒だ。瞳だって、深い青だったはずなのに普通の日本人の瞳の色…焦茶っぽい感じになっていた。
でも、声だけは昔のままだった。
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