第96話

「こーぉ、おれー。いるー?」



その声は聞いたこともない声だった。


世那ような悪魔の声でもない。

璃久みたいに冷たくもなく。

仁の低い声でもない。



誰⋯。


陽気いうか、子供っぽい明るい声で。



「寝てんのー?開けていー?」



ガチャっと、いきなり開かれた扉に、私は目を見開いた。嘘でしょって。


どうしよう

どうしよう

どうすればいいッ?


どれだけ焦っても、開けられる扉は止まらない。



扉から顔を覗かせたその男は、「こーう?」と、煌の名前を呼び。



私と目が合った瞬間、その男は驚いたように「え?」と声を漏らした。

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