第69話

「痕残ってんな⋯、ごめんな」


仁は私を支えながら起こし、私の首に触れようとし。本当にこの前と同一人物らしい仁は、「何にする?」と私に聞く。



「⋯パ、ンが⋯いいです⋯」


仁の顔が見れず、私は視線を下に落とした。

その視線の先は、タンクトップのみで。ブラジャーはつけていなかった。

それが恥ずかしく、私は布団で体を隠した。



「飲み物は?」


「⋯お、茶で⋯」


「パンとお茶って、合わなくねぇか?」


「な、んでも⋯いいですから⋯」



仁はフッと笑い、「キスしてもいいか?」と、私を引き寄せる力を強め、まるですくいこむように私の顔に、仁の整った顔がいきなり近づいてきて。


びっくりした私は、後退るけど。



「イヤか?」



甘く、呟く仁の声は、耳が麻痺しそうだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る