第64話

逃げたいのに、逃げられない。



3つ目の傷をガラスでつけられた時、「あーあ」という声が、遠のく意識の中で聞こえた。




「雅ぃ、悪いけどそれ、俺のだから」



―――返してくれる?



見えたのは、銀色の髪⋯。



完全に意識を失った私は、もうそれしか覚えていなく。



救世主だと思った彼は、私が逃げ出した人だった。

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