第62話

さっきとは違い、まるで獣のような瞳。

理性を失ったように、私の肩に向かって振り下げてきた雅の手には、私が割ってしまったグラスの破片が、握り締めりていた。


分かった時には、もう遅い。



「ッ―――!!」



肩に、突き刺さるような激痛が走る。


グラスの破片を私の肩に突き刺した雅は、その破片をどこかに放り投げると、ドクドク⋯と出てきた私の血にすがりつくように、出てくる血を舌を這わせてきて。



「痛いッ、痛い!!」



皮膚へと零れおちる血を舐めあげた彼は、今度は傷口に舌を這わせ。まるで傷口をえぐるように差し込まれる舌に、悲鳴をあげた。


鉄の匂いが、充満する。



「痛いっ⋯、やめ、痛いッ」



雅が傷口を舌でえぐるせいで、血が止まらない。

私の血を飲んでいる雅⋯。



「ッ―――痛いよぉ⋯」



痛みで、涙が溢れ出してきて。

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