第57話

「ちょっと待って、世那に電話するから」



世那に電話をする?

世那がここに来るかもしれないの?

絶対イヤ、もうあんな思いはしたくない!

雅の腕の中で、必死に暴れた。

まさか私が暴れるとは思わなかったのか、「わっ」と、声をあげた雅。バランスが崩れ、倒れ込むように床へと尻もちをついた雅。


私はテーブルの方へと倒れ、そこに置いていたお茶のグラスが床へと落ち、ガラスの割れる音が、部屋に響いた。



「ご、めん、大丈夫?」



雅は私の見て、もう一度「大丈夫?」と言い、私の顔を見つめてくる。



「は、はい⋯、あ」


お茶で濡れてしまった床。

割れたグラスの破片が散らばっていて。



「す、すみませんっ⋯、割ってしまって⋯!」



せっかく用意してくれたお茶だったのに。すごく嬉しかったのに。お茶を飲みながら、泣きそうになったぐらいなのに。

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