第56話

「なあ、君、名前なんだっけ?」


100パーセントの、確信に変わる。



私はグラスを机の上に置き、雅から離れるために出口である扉の方へと向かった。先ほどよりも震えが収まった足で進み、扉の取手に手をかける。




「あー、なるほど、君が陽向ちゃんか」



さっきまでベットで寝転んでいたはずなのに、扉を開けた瞬間、力強い何かが、私を引き寄せる。



がっちりと首に腕を回され、部屋の中に引き戻され、バタンと再び閉まる扉に背筋が凍った。



「いつもなら見逃すんだけどなあ」


「い、いやっ⋯」


「さすがに俺も、逃がしたことバレて世那に怒られるのは勘弁だからさ」


「違う、違いますっ⋯、人違いです⋯!」


「もしかしてさっき、世那んとこから逃げ出してたとこだった?」


「違っ⋯」



世那じゃない、煌だから。


ううん、一緒だ。

あんな、イカれた奴ら!

みんな一緒!

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