第47話

「ごめんね、俺からも程々にしろって、言っておくから」


困ったように笑っている彼は、やっぱり普通の男で。私に親切にしてくれる人。


彼と一緒にいれば安全なのかもしれない。もう少し様子を見て、大丈夫そうなら、ここからの脱出を手伝ってもらえるかもしれない。




多分、ここは3階の部屋。細長い廊下を私を支えて歩く男。「大丈夫?」と何回も聞いてくれる彼は、階段から見て1番奥の方への扉へと進んでいく。



当たり前のように扉を開ければ、そこには2つの洗濯機が置かれていた。



「ここに来るの、初めて?」


「え⋯、は、はい⋯」


「そこにタオルあるから。洗濯機も、乾燥も出来るやつだから、使うといいよ」


「⋯はい⋯」


「新しい服は適当に置いとくから」


「あ、ありがと⋯ございます⋯えっと⋯」


「ん?ああ、俺の事知らなかった? 雅だよ。浴室の方は鍵閉めれるから、ちゃんと閉めるんだよ」


雅という男は、「俺の部屋、1番手前の部屋だから。ゆっくり入りな」と、私を残し扉を閉めた。

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