第46話

「もしかして、機嫌悪くて追い出された?仁とか、信乃(しの)に」


そういうふうにしておこうと思った。



「俺の部屋おいで。着替えあるし、シャワーぐらい使っていいからさ。ね?」



ニコっと、あたしの警戒心を解くように話しかけてくる男。怖い私は、オレンジ色の髪を持つ男を見上げる。



「なにも、しないですか⋯?」


「なにもって?」


「そういう、こと⋯」


「え⋯?ああ、うん、しない。約束するよ」



手を借りて、ゆっくり立ち上がる。



「何この手⋯すごい腫れてる。ってか君裸足じゃん、靴はどうしたの」


彼は私の手首を見て、驚いた声を出した。



「あ⋯」


「んー、その手当てもしようか。おいで」



私を歩きやすいように足を進める彼。ほんとに、まともな人?ほんとに?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る