第44話

怪我をしていない手を使い、ゆっくりと階段を降りる。早く出口へ。この建物から出ないと。ここから出て警察に行ってやる。

そしたら全員捕まえてやる。


そう思った時、スマホの存在を思い出した。私の鞄⋯、ああ、初めの部屋だと、考え込む。


仁に首を締められ、世那に抱かれた場所。




戻る?あの部屋に?

いや、それはダメだと判断する。もしかしたらいるかもしれない。2人のうちのどちらかが。


このまま出よう。その方が身の安全は確保できるのだから。



そう思っている時、私ではない足音が、近くで聞こえた。いる、誰かいる。

隠れないと。そう考えて思い浮かんだのが上へ戻ることだった。


上に誰もいないことは、確認済みだから。



私は必死に足を動かした。けれども上手く動かせない足は、いとも簡単に階段を踏み外す。



声は出なかったものの、階段から滑って膝をついた音が聞こえたのか、「大丈夫か!?」と、走って駆けつけてきた男がいて。

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