第25話

イヤも、やめても言えず。

あっという間に離れたそれは、ただ唖然とさせるだけで。



「俺、出て行った方がいい?」


それを見ていたらしい世那は楽しそうに笑っている。



「どっちでも」



そう言った煌は顔を傾け、身動きが出来ない私にまた唇を重ねてきて。



「殺さないようにね」



ぬるりと、味わったことの無い感触が口内へ入ってきた時、バタンと扉の閉じる音が聞こえた。



その音のおかげか、やっと抵抗するということを思い出した私は、必死に胸元を押した。


ズキン―――ッと、左手首に激痛が走り、私は痛みのせいで顔を歪めた。その拍子に口内へと入っていたぬめっとした柔らかいモノに歯を立ててしまい。


血の味が、口内に広がった。


けれども動きを止めない煌の舌は、深く深く私の舌を味わう。後頭部を押さえつけれ、顔は身動き出来ず。


かといって手首に走る激痛のせいで、上手く抵抗も出来なくて。

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