第21話

ニコニコしていたはずの世那の目付きが、一瞬にして鋭い目付きに変わった。この男はいつも笑っている。けど、分かる。心の奥では全く笑っていないことを。



「世那」



世那のもう片方の手が、私の足に触れた時、璃久が世那の名前を呼んだ。

不機嫌そうに「⋯なに?」と呟く世那は、カタカタと震える私のスカートの中へ手を入れ。



「煌が連れて来いって」



その言葉をきき、世那は手の動きを止めた。

スマホを操作する璃久の手からは、いつの間にかタバコが無くなっていて。



「はあ?煌が来ればいいじゃん」


「俺もう部屋に戻るから、さっさと連れていかねぇと怒られるのはお前だぞ」


「いいとこなのに⋯、マジで空気読めよなあ」



不機嫌そうに呟いた世那は、スカートの中に入れていた手を退け、私の掴んでいた顔も離し。未だに泣きじゃくっている私の二の腕を掴んできて。


カタカタと震える私を立たせた世那は、「今からそんなに震えてどうすんの?」と、笑いながら言う。


これが夢であれば冷めてほしいと願った。けど、その願いは叶えてはくれない。



扉をあけた先は、また部屋になっていた。

仁という男にここへ連れてこられた時は、戸惑いとパニックであまり覚えていなかったのが本音で。


1人がけのソファ。

小さいテレビ。

小さい冷蔵庫⋯。


また扉をあければ、細い廊下があり。


その景色には見覚えがあった。

細長い廊下には、何個かの扉⋯。

上、下へと続く階段⋯。


階段をおりれば逃げ出せるのに、真逆の上へと繋がる階段を登る世那に困惑した。掴まれた二の腕が、痛い。

この男は、私に痛みしか与えない⋯。

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