第9話

私はもう、終わるのを待った。

苦しくて辛くて痛い思いをするのは、もう嫌だ。


手首の服のすそで涙をふいているとき、先程仁が出ていった扉が、急に開かれて。

その音にビクッとした私は、その方へと視線をずらした。けれども動きを止めない世那に、顔をしかめる。



「え⋯?世那、何やってんだ?」



中に入ってきたのは、金髪⋯。



「あれ、璃久(りく)、用あるんじゃなかった?」


「なくなった⋯、つーか、ここでやんなよ」


「仁からの許可あるから。璃久も混ざる?」


「混ざるって⋯」



璃久と呼ばれた男のは、どすんとソファに座り、ずっと腰を動かし続ける世那を止めようともしない様子で。



「この中に無断で入ったんだよ〜」


「へぇ、なんで?つかどうやって?」


「それが喋んなくて、ね?」


「それで、やってる理由は?」


「仁が口割るまで廻せってさ。俺はお先につまみ食い」


「ふーん」


「あれ、血ィ出てる。大丈夫?」



どう見ても大丈夫じゃないのに。ニコニコ笑っている世那の動きは止まらず。私は歯を食いしばって涙を流す事しか出来ず。

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