第5話
「ほ、んとに⋯なにも、知らないんです⋯!」
「あ?」
「すみませんッ⋯、すみませんでした⋯」
「おちょくってんのか、誰の差し金だって聞いてんだよ」
誰の差し金でも、なんでもないのだから。
髪の毛を掴まれながら、涙を流しながら必死に首をふる。
知らない、ほんとに。
どうしてこうなったか。
どうみても怒っている仁は、掴んでいる髪を強く掴み、ソファに座る茶髪の男へと放り投げた。上手く受け身が取れない私の手首が、グキっと変な音が鳴ったような気がして。
「廻してこい世那(せな)、口割るまで何してもいい」
「マジ?了解」
冷たく言い放った仁は、私達がいる部屋から不機嫌そうに出ていき。
体を震わすことしかできない私は、「ねぇ、名前なんて言うの?」と、いつの間にかソファからおりて私の視線に合わせるようにしゃがみ、茶髪の男がにっこりと笑いかけていることに対して、恐怖しか覚えなくて。
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