第79話

「そうすれば、もう誰も傷つかない?」私がそう聞くと「大丈夫。」と裕二さんは言った。





裕二さんが何をするつもりなのかわからなかった。





「全て捨てるよ。」私はそう答えた。






「母親との繋がりの名前も捨てれるか?」





渡辺鈴。この名前を捨てなければならない。






迷いはなかった。






「ママとの繋がりなんて、この傷だけで十分だよ。」私は頬の傷を撫でた。






大好きで、大嫌いだったママ。





お爺さんは何も言わなかった。





私は裕二さんに連れられ、彼のマンションは向かった。





荷物をまとめるように言われ、すぐに準備をした。






荷物はすごく少なかった。





「それだけでいいの?」裕二さんは驚いたような顔をした。




昔洋にもらったネックレスを付けて、リカから貰ったマフラーを巻いた。




そして、キャリーの中には数日分の服と日用品。

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