第73話

「すーずちゃん」この名前で呼ぶ人は1人しかいない。





彼が来るのは1年ぶりくらいだ。





リカが事故にあい、ちょうど一年経とうとしていた冬の日、あの男が現れた。





「何……」私がそう言うと、「また、お金なくなっちゃって。とりあえず、20万でいいから。」そう言って手を出してきた。





「あんたに渡すお金なんてない。警察に行くから。」私はそう言った。





「俺さ、今娘がいるんだよ。もうすぐ5歳になる。一応、鈴ちゃんの妹なのに。前科者の娘って可哀想だと思わない?」





「……は?」5年前って…まだママが生きていた時…





他に女の人がいて、しかも子どもがいたのにうちに居着いていたの?






「何のために居座ってたの?」私は手を握り締めながら聞いた。





「いや、鈴ちゃんのママさ。俺のためなら何でもしてくれるから。金貰おうと思って。」






「何それ…」私は俯きながら言った。





「てゆうか、一年前の事故がもう少し上手くいってたらなぁ…」男はそう言った。






「え…どう言うこと?」うまく行くって…なに…?





「あー、でも。鈴ちゃんと俺血は繋がってても戸籍上は親子じゃないから意味なかったんだよな。」彼は笑っている。





「何言ってるの…」私は顔を上げた。






彼は私の方を見てこう言った。

「鈴ちゃんが轢かれるはずだったんだよ。よかったね。守ってもらえて。」





「……え…?」





「だから、鈴ちゃんが轢かれたら保険金貰えるじゃん?それをもらおうと思って、折角知り合いに頼んだのに違う人殺しちゃうしびっくりしたよ。でも、よく考えたら、君と俺の関係じゃ、保険金もらえないって気がついてさー、笑ったよ。」そう言いながら、男は大きな声で笑った。




そんなことのためにリカの死んだの?

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