第60話

少し考えたような顔をして犬飼くんは




「かっこよかったから。」と言った。





「かっこいい?私が?」そんなこと言われたの初めてだった。




「群れないで、孤高な感じで。人とは違う空気を感じました。目を惹かれて気付いたら好きでした。」





そう見えていたのか。





私は、かっこよくなんてない。





人が怖い。人と関わるのが好きではない。ただそれだけだった。





「そっか…好きになってくれてありがとう。」





私はそう言うと学校を後にした。






校門には誠くんがいた。





「何してるの?」彼は大荷物を持っている。






「今から旅に出んだよ。親にバレたらやべえから。卒業式終わったらその足で行こうと思って。」






「そうなんだ。」そう言えば、誠くん教科書を机の中に置きっぱなしで先生が呼んでいたな。




と、思い出したけど、きっとこの人はもって帰る気なんてないんだろうな。と思った。






「なぁ、一緒に来ない?」誠くんは珍しく真面目な顔をした。「ばーか。就職決まってる人に変なこと言わないで。」私はそう答えた。





「だよなー。リンとは気が合うから相棒としてやっていけると思ったんだけどな。」彼はケラケラ笑ってる。





「じゃーな。」誠くんはそう言うと駅の方へと行ってしまった。「またね。」私は手を振った。





彼は初めて出来た同級生の友達だった。

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