第23話



 兄さまのお顔や首筋からはたくさんの汗が吹き出ていて、足元を見れば、下駄を履いた紺色の足袋は土まみれで白くなっている。



 走りまわって、私を探して下さったのですね……?




「ご心配おかけして申し訳ございません。兄さま……」



「もういいから早く中に入れ。心配をかけたのだから、父上とお継母上にきちんとお詫びするのだぞ」




 懐から手拭いを出して顔と首筋の汗を拭いながら、兄さまは先に家の者が出入りする裏口へと向かう。




「はい……」




 私は今更ながら、自分の軽率な行動を後悔した。



 お父上さまにも母さまにも、そして兄さまにも。

 たくさんたくさん心配をかけてしまった。




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