第22話
利勝さま………。
結局……本当にお名前しか聞かせてもらえなかった。
(……また、会えるかしら?)
利勝さまのお姿が見えなくなるまでしばらく見送ったあと、ため息をひとつついて、門をくぐり家の中へ入ろうとした。
と、そこへ。
「――――ゆき!!」
声に呼ばれて、振り返る。
息を切らしながら走って門をくぐり抜けてきたのは、大好きな八十治兄さま。
兄さま、私のことを探しに出ていて下さったんだ………。
うれしくて、私は兄さまに近寄った。
「兄さま……!」
「この、馬鹿者!!!」
開口一番にそう言われ、びっくりして目をつむる。
こんな兄さま 初めて。
初めて、叱られた。
「使いに出て 迷子になったそうだな!? どうして俺が戻るまで待てなかったんだ!?」
「も、申し訳ございません……!」
あわてて頭を下げるも、兄さまはたいそうなため息をつかれて、
「無事に戻ってきたからよかったものの……!父上もお継母上もみな、帰らぬお前を心配していたんだぞ!?」
眉間に深い溝を作り、お腹立ちなのは明らか。
.
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます