第22話




 利勝さま………。




 結局……本当にお名前しか聞かせてもらえなかった。




(……また、会えるかしら?)




 利勝さまのお姿が見えなくなるまでしばらく見送ったあと、ため息をひとつついて、門をくぐり家の中へ入ろうとした。


 と、そこへ。




「――――ゆき!!」




 声に呼ばれて、振り返る。




 息を切らしながら走って門をくぐり抜けてきたのは、大好きな八十治兄さま。




 兄さま、私のことを探しに出ていて下さったんだ………。




 うれしくて、私は兄さまに近寄った。




「兄さま……!」


「この、馬鹿者!!!」




 開口一番にそう言われ、びっくりして目をつむる。




 こんな兄さま 初めて。


 初めて、叱られた。




「使いに出て 迷子になったそうだな!? どうして俺が戻るまで待てなかったんだ!?」



「も、申し訳ございません……!」




 あわてて頭を下げるも、兄さまはたいそうなため息をつかれて、




「無事に戻ってきたからよかったものの……!父上もお継母上もみな、帰らぬお前を心配していたんだぞ!?」




 眉間に深い溝を作り、お腹立ちなのは明らか。




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