第10話



「よし。他に違反した者はいないようだな。では、昨日の戦ごっこの続きをやろう!」




 そう言った俊彦さまを先頭に皆さまは元気よく母さまに挨拶を済ませると、外へ駆け出して行かれました。



 母さまに外出するむねを伝えてから最後に兄さまが姿を現すと、見送るために私は兄さまに駆け寄りました。




「兄さま……!あの……!」




 先ほどはとても感動いたしました!

 兄さまは私の誇りです!



 兄さま贔屓びいきの私は興奮覚めやらぬ気持ちを伝えたくて、気持ちのまま兄さまを呼び止めたのですが。




 兄さまは また困ったお顔をなされて、




「ゆき。すまないが皆と一緒に出かけてくる。帰ったら必ず遊んでやるから。ごめんな?」




 本当にすまなそうなお顔をされて、そう謝って下さるから。



 その気持ちがうれしくて、思わず笑みがこぼれた。




「いいえ!私のことなど、お気になさらないで下さい!


 先ほどの兄さまは とても素敵でした!

 ゆきは感動いたしました!」



 笑顔で告げると、兄さまは私の言葉に驚いて照れていらっしゃる。




「馬鹿者。からかうな」




 コツンと頭を小突かれて、喜んでしまう私はおかしいですか?




 そっぽを向くその少し赤い横顔が、私にはとてもまぶしく見えました。




 .

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る