第72話

そして、晃貴に背中を見せた瞬間、


「ぐぇっ」


と、晃貴の部屋に、かえるのような声が響き渡った。その声は、どう聞いても私の喉から出て。


く、苦しい!



そう思って喉にふれれば、私のじゃない皮膚が、指先に当たった。

晃貴の腕が、私の首元に回っていて。



「ぐえって何だよ」



そう言う晃貴の声は、笑っている。


まさか、


まさか、この男。



「お、起きてたの!?」


「寝てたよ」


「いつから起きてたの!?」


「真希がベット乗ってきた時」



って、ほぼ初め!!



「ね、寝たふりしてたの!?」


「ほぼ寝てた、けど真希ちゃんの声で起きた」



声って…!



「私何もしてないからねっ」


「そうだっけ?怪力魔人の見せ所なんだけど?」



悪口言ってたの、バレてる!!

首に回る腕が、強引に引き寄せてきて、ドスンと、おしりからベットへ落ちる。



「く、くるし」


「くるしそーな真希ちゃん大好き」



悪魔!



「は、離して」


「いや。晃貴大好き〜ってキスしてきたじゃん」


「大好きって言ってないっ、好きって言ったの!」



………あ……。



「へぇ、そんなこと言ってたんだー」



起きてたくせに。


もう、ほんと嫌になる……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る