第57話

「だ、だめっ、」



と、必死に拒む私に、晃貴は「ははっ、」珍しく声あげておかしそうに笑った。



私を抱きしめる力を強めた晃貴は、「やっぱおかしいと思った」と、私を見つめてくる。




「なんか企んでんだろ?言ってみ」


「た、企んでなんか⋯」


「じゃあキスするか、みんなの前で凄いやつ」


「し、しないよっ」


「真希から誘ってきたのにおかしくね?」



晃貴が片手で、私の両頬を掴んでくる。

まるで逃がさない、とでも言うかのように。


ほら、結局、私がからかおうにも、晃貴にはかなわない⋯



「だって⋯」


「だって?」


「私だって晃貴に意地悪したい⋯」



また、笑う晃貴は、「俺に意地悪してぇの?」とからかい気味に言ってくる。


顔を固定する晃貴の手のひらから逃げられない私は、「もういい⋯あきらめる⋯」と、自分の手のひらを使い晃貴から離れようとするけど。

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