第49話

「ああ、ううん、ごめんね驚かせて。あいつは?」



にっこりと、微笑む男の人。

茶髪に、少し、優しそうな印象の晃貴のお兄さん。

爽やかなタイプの晃貴。

穏やかなタイプのお兄さん。


あまり、似てない、と思った。



「あ、部屋で、寝てまして⋯」


「寝てるの?」


「熱があって、⋯風邪を⋯」


「ああ、そうなんだ、バカでも風邪ひくのな」



可笑しそうに笑うその人は、「着替え取りに来ただけだらすぐに帰るよ」と、入ったことの無い、部屋の方へと向かい⋯。



それを見て、え⋯と、思う私がいた。




風邪をひいてる弟を、心配しないの?って。



家族じゃない私のお母さんもお父さんも、お姉ちゃんも晃貴の心配をしてるのに。


家族であるお兄さんは、心配しないの?




だから、言ってみた。

そのまま、その通りに。



「晃貴のこと、心配しないんですか?」って。



初対面なのに。

晃貴のお兄さんなのに。

晃貴の顔が原因で、離婚した家族⋯。



バラバラな、家族⋯。

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