第3話

口説きまくる宣言をした皆見君は、朝と夕以外にも私に会いに来た。

休み時間はもちろんだし、お昼ご飯も誘ってくる。

しまいには「サッカー部の練習試合見に来やん?俺1年やけど出るから」と、恥ずかしそうにしていた。


友達と見に行った練習試合で皆見君はゴールを決めていた。友達は「かっこいいやん」と褒めていた。そんな友達に「そうやな」と笑った。




皆見君を受け入れたのは、いつだったのか。

あんなにも愛を伝えられて、まだ分からない訳もなく。





──…夏祭り、浴衣を着た私を見て、皆見君は「可愛すぎる…!!」と手で顔を隠していた。そんな皆見君を見て、私もクスクスと笑った。




「俺なあ、分かったかもしれん」


屋台で買ったりんご飴を食べている時、フランクフルトを手に持っている皆見君が、夜空に浮かぶ花火を見ながら言った。



「前世でも佐野さんのこと想ってたんやろなあって。だから来世でも佐野さんと会うまで探し続けんちゃうかな」



いつまでたっても口説き続ける皆見君に、私は笑った。



「そんなに好きなん?」


「うん」


「なんか、初めに喋りかけてきたとき、雰囲気が好きとか言わんかった?」


「俺もよく分からんねん。他の子であの子可愛いなあとかは今までも思ってたんやけど、なんかちゃうくて…」


「わからんの?」


「ほんまにピーンてきた、他の男にとられたらヤバいって思って。彼氏おらんでよかった〜」


「いてたらどうしてたん?」


「いや、でも、絶対結婚すんの俺やから。別れてくれって頭下げたかも」


「おらんでよかったな」


「ほんまそれな」



クスクス笑っている私の顔を見つめてきた彼は、「手ぇ繋いでい?」と、フランクフルトを持っていない手を差し出してきた。


自然と手を重ねた私はきっと、彼に恋をしてると感じ取っていた。


特に取り柄もなかった。

顔も、背丈も標準。

そんな私にプロポーズした彼と、夏祭りの帰り道に正式に付き合うこととなった。




皆見君はすごく喜んでいた。

今すぐ婚姻届書きたいとはしゃいでいた。

「愛してるよー!」と花火が上がっていた方の空に向かって叫んでいた。



私は皆見君のことをしょうと呼ぶようになり。

翔は私をずっと照れたように美春みはる

と、何度も何度も言っていた。



翔の私への溺愛っぷりは、学校の先生にも伝わるほどで。高校生活の約3年間。翔と別れることもなく。

3年の習字の授業で〝好きな文字を書く〟というテーマで、翔は〝美しい春〟と書いていた。





別々の大学に進学しても、翔の恋人トークは収まらなかったらしい。

元々愛嬌のいい翔は、大学で新しい友達も増えたらしいけど、「俺の結婚する子!」と、私の紹介をして。



〝溺愛されてる噂の彼女〟と、私は翔の通う大学では有名らしかった。

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