第2話
正直、私はいきなり告白してくる変な生徒としか思わなかった。「…ごめんなさい」と、頭を軽く下げた私はまだ習字の片付けが途中なのにその場から離れた。
中学からの友達に言えば「プロポーズぅ?! ええ、誰誰?!」とびっくりされながらの大爆笑だったけど。
その隣のクラスであろう男子生徒は、その日から毎朝教室の中まで私に会いにくるようになった。
「おはよ!」と、昨日と同じように照れた表情をする彼は、登校してきたばかりの私の机までやってくる。
戸惑いながらも「…お、はよ…」と返事をすれば、彼はすごく嬉しそうにした。
放課後は「ばいばい」と、必ず遠くからでも手を振ってくる。
そんな日が2.3日経てば、「
といつの間にか私の名前を知っていた。
「あの人、
友達曰く、というよりもクラスメイトからも、「めっちゃ猛アタックされてるやん」と、からかわれたりもして。
サッカーの部活動に入っているらしい皆見君は、「ばいばい佐野さん!」と笑顔で私に言ったあとエナメルバッグを持って、下足場へと向かっていく。
朝と放課後、必ず挨拶をしてくるようになった皆見君と、普通の会話をしたのは、1週間に1度の書道の時間。
書道は、自分のクラスとは違い自由に座っていい席で。私が座っていると当たり前のように「横いい?」と座ってきた皆見君は、今日も照れていたように見えた。
硯で墨を作っている最中、同じように墨を作っている皆見君。
「なんかもう、やばいんやけど。俺たぶん、めっちゃくちゃ佐野さんのこと好きやわ」
プロポーズと、朝と夕の挨拶ぐらいしかしたことない。それなのに私を好きだという男。
「あかんかな?絶対、佐野さんも俺のこと好きになると思うねん」
私も?彼を好きに?
「なるん?」
そう聞けば、「うん、なんで」と即答で答えてくる。
「なんかほんまに、この人やって思ってん。運命の人? ほら言うやん、赤い糸とか。絶対俺ら繋がってるわって」
「…」
「結婚前提で、付き合わん?」
まだ、お互いが15歳だった。
「まだ分からん…、皆見君のこと全然知らんから…」
「じゃあこれから教えるわな。絶対俺ら結婚するからあと60年は知っていける」
「結婚て…」
「あかん?」
「好きとかの前に、プロポーズなん?」
「なんかもう、好きよりも愛してるって感じなんやけど」
笑う皆見君は、「まだあかんみたいやからこれから口説きまくるわ」と言った。
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