第87話
「あん時みたいに、泣かせたいわけじゃないんだ」
ポツ·····ポツ·····と、雨がゆっくり降ってくる。
和臣は自分自身に言い聞かせるように、私にだけ聞こえるようなトーンで、口を開く。
「ただ、やっぱり諦めきれない。ずっと密葉のこと考えていた。すげぇ会いたくて·····ふられたっつーのに、マジで女々しいって·····」
「············」
「密葉が·····困るのは分かってる」
「··········」
「けど、俺の気持ちも知っててほしい。この先、ずっと変わらない」
それを言いに、来てくれたの?
ムカつく·····、イライラしてたまらない。
ほら、また·····涙がでる。
こんなにも、和臣に会えて嬉しいって思う自分がいる。
もう、決めたはずなのに。
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