第85話
「傘、忘れたのか?」
どうして·····
どうしているの·····
驚きのせいで声が出ない私に、彼は私を濡れないように、自身の持っている傘を私の方に傾ける。
もう、松葉杖を持っていない彼は、「密葉?」と、顔を傾げて。
やっぱり、どうしても驚いて声が出ない。
だってもう二度と会えない相手だったのに。
「··········足は··········」
ようやく出たと思った声は、ちゃんと聞こえてるか分からないほど小さく。
「治った」
もう、あの別れから1ヶ月はたつ。
治ったのは当然のことで·····。
いや、じゃなくて··········。
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