3 複雑

第77話

「おまっ、なんつー·····、傘持ってなかったのか?」


ずぶ濡れの私を見て、お兄ちゃんは驚いた顔をした。そりゃそうだ、ほとんど全身濡れてるんだから。

けど、雨が降っててよかった。こうやって泣いていたのも誤魔化せるのだから。




「·····お風呂入る」


「おお、ちゃんと温めろよ?また風邪ひくぞ」


「··········」



ずぶ濡れになった制服のブラウスを洗濯機の中にいれた。それから靴下も下着も。スカートはクリーニングに出さなきゃ·····。



裸のまま、洗濯機を回す。





シャワーで体を温めながら、私は今更な事を考えていた。



私はあの人のことを、名前だけしか知らなかった。


あとは1つ上の学年とだけ。



どこに住んでいるのかも、いつも私服だったからどこの高校かも分からない。そう思えば、どうして骨折してるのかも知らなくて。

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