第69話

やっぱり、いつものとこに彼はいる。

松葉杖では無い方で傘をさして、私を待っている。

きちんと傘をさせてないせいで、服は濡れている。




「どうして·····雨·····」


「毎日来るって言ったから」


「怪我したらどうするんですか·····」



私は鞄の中からハンカチを取り出し、濡れいる彼の服をポンポンとふいた。


松葉杖と傘を持っていれば、両手が塞がってハンカチを持っていたとしても拭けないから。




「あんたに会えるなら、怪我してもいいから」


嬉しそうに笑う。


ダメ·····、このままじゃダメ·····。





「もう、やめて··········」


濡れている服を拭くのを辞めて、私はぎゅっと傘を握りしめた。傘に雨が当たり、肌が少しずつ冷えてくるのが分かる。



「なに?」


「ほんとにやめて······、もう来ないで·····、お願いします」


「なんで?」


「ほんとに·····困るの」


「なんで困る?」



なんで?


だって、当たり前になっているから。


あなたに会うことが。




このままいけば、私は藤原和臣という男をもっと知りたくなってしまうだろう。

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