第70話
「私は貴方と付き合わない·····。絶対に付き合わない·····」
「なんでそう言いきれる?」
男の顔が見れなくて、自分自身の傘を持つ手を見ることしかできなかった。次第に強くなる雨·····。
ダメだと分かっているのに、彼はどうやってこの雨の中帰るんだろう?って考えてしまう自分がいて。
「弟がいるの··········」
「弟?」
「病気の弟がいる」
いつの間にか、敬語は無くなっていた。
私の小さい声は、この激しい雨の中、聞こえているのかさえ分からない。
「いつ··········どうなるか··········分からない·····」
声が震える。
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