第64話

「·····やめてください·····」


「じゃあ明日も来るから」


「··········」


それをやめてって言ってるのに。

傘を、ささなきゃ良かった?

こうなることなら。


ううん、こうなるって分かってても私は傘をさしていた。助けない·····ってことはしなかった。




「8時·····過ぎに帰りますから·····」


「8時?」


「だからずっと待たないで。足を大事にしてください」




もう無駄だと思った。

やめてと何回言っても、この人は来る。


ならばせめて·····。




「大事にするから、そこのコンビニまで一緒に歩くってのは無理?帰り道だろ?」





無理と言っても、この人は強引に歩くだろうと思った。




「コンビニまでだから·····」




男は嬉しそうに、ちいさく笑った。

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