第54話

「礼しないと、またあんたに会いに来ると思う」



それはそれで困る。

こうして病院の前で、また待ち伏せするということでしょ?

本当にお礼なんていらないのに。律儀な男は借りを返さないといけないようで。





「お礼って·····、思いつきません」


「じゃあまた明日、ここで待ってるから。そん時に教えて欲しい」



本気で言ってるの?

また明日会いに来る?

私にお礼が出来るまで·····。



「なんでもいいんですか?」


「なんでも」


「じゃあ、すぐそこのコンビニでお茶を買ってくれますか?」


「お茶?」


「はい、今すごく喉がかわいてて·····、いいですか?」



藤原和臣という男は、「あんたがそれでいいなら」と、少し笑って足を進めた。

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