第53話
もう外が暗いせいか、やけに目の前の男の髪が黒く感じた。
「俺、藤原和臣」
「え?」
ふじわらかずおみ?
「名前、まだ言ったことねぇなって」
確かにその通りだけど。というかそもそも昨日初めて会っただけであって。さっきも会ったけど、あれは数秒ぐらいで。
「あの·····」
「昨日の礼がしたい」
お礼·····。
傘をさしたお礼?
え?
それを言うために待ってたの?
わざわざ?
立ったまま?
松葉杖で?
怪我をしてるのに?
「そんな、本当にいりません」
「そういうの困る」
困るのは私の方なんだけど·····。
硬派な男は、律儀な人がのようで。
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