第51話

少しだけ面会時間が過ぎても、看護師は黙認してくれた。「よろしくお願いします」と夜勤の看護師に言い、私はエレベーターに乗った。



もう病院の中は薄暗くて、いつもの慣れた風景を目に歩く。



病院から出る自動扉を潜り、外へ行こうとした時、私の足は止まった。



松葉杖で体を支えながら、立っている人がそこにいたから。松葉杖が2本から1本になっているその男は、私を待っているんだとすぐに分かった。




名前も知らない、ただ傘で雨から守っただけの男。



そういえばさっき、何か話がしたいと言っていたような·····。





「··········待ってたんですか?」



男に聞こえるように言うと、「うん」と答えてきて。

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