第43話

だから今回も、松葉杖では早く歩けないし雨に濡れてしまうから、と。鞄から折り畳み傘を取り出し、傘を広げその男性に声をかけただけ。



大丈夫ですか?と。



男性はびっくりした様子で、私の方を見た。漆黒のような瞳が印象的な彼は歩くことをやめ、「え·····」と戸惑った声を出した。



「あの·····濡れてしまうと思って」



黒い髪が良く似合う男性は、近づくと同じ年頃ように感じた。爽やかでもなく、不良でもない、どちらかと言うと硬派な顔つきの彼。




「傘さしとくので、歩けますか?」




顔を傾けて聞くと、男性は「··········ありがとう·····」と、ゆっくりと松葉杖を使って歩き出した。

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