第44話
病院の中に入り、傘を畳むと、男性からもう一度「ありがとう」とお礼を言われた。硬派っぽい彼は、私に2回もお礼を言ってくる。
明るい病院内では、彼の瞳の黒さがやけに目立った。
スッとした瞳。
薄い唇·····。
「いえ、濡れませんでした?」
「いや、逆に濡らせちまったな。悪い」
「気にしないでください」
真面目っぽい、黒髪が良く似合う硬派な顔つきなのに言葉がワルっぽく、ちょっと驚いた。
「あんたもここ通ってんの?」
濡れた傘を傘専用のビニール袋に入れている時、首を傾げる彼がそう言った。
通ってる。といえば、通っているけど·····。
通院では無いわけで。
「弟のお見舞いに」
小さく笑いながら「では」と、そろそろ侑李の病室に戻ろうとした時、
「待って」
松葉杖の彼に呼び止められ、私はもう一度彼の方へと振り向いた。松葉杖を使いこちらに歩いてくる彼の耳には、銀色に輝く輪っかのピアスが付けられていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます